26年 第1回 「伝送設備」



26_1_setubi_1_(1).png

問1
(1)
ア:⑧ 光スプリッタ
イ:⑪ TDM
ウ:⑮ TDMA
エ:⑨ 1.25


補足

・SS・ADS・PDSのそれぞれの構成図
SS2.png

ADS3.png

PDS2.png

PDS方式(PON)の構成機器
ONU(Optical Network Unit):ユーザ宅内に設置される光終端装置。光ファイバによるGE-PONの通信を終端し、Etherなどの電気信号に変換する装置
OLT(Optical Line Terminal):通信事業者の局舎側に設置される光終端装置。一つの光ファイバに最大32台のONUを収容することができる。
光スプリッタ:電線上などに設置され、OLTを複数のONUに接続するために光信号を分岐・合流する装置

・PONの伝送方式
PONは、下りは、TDM方式、上りは、TDMA方式が使われ、上り、下りはそれぞれWDM(波長多重)技術により別の波長で伝送される。

TDM(Time Division Multiplexing:時分割多重):一つの伝送路を時間で区切って複数のタイムスロットを作り、異なる信号をそれぞれのタイムスロットに格納し多重伝送をする技術。PONでは、多重化された下り信号はOLT配下のすべてのONUに対して伝送されるが、ONUは、ONU個々に割り当てられたタイムスロットの信号のみを抽出して端末側へ送信する。
TDMA(Time Division Multiple Access:時分割多元接続):一つの伝送路を複数のユーザで同時利用する方式。OLTは、各ONUに対して送信許可を通知することにより、各ONUからOLTへの上り信号を時間的に分離し、衝突しないように制御している。
WDM(波長分割多重:Wavelength Division Multiplexing):一心の光ファイバに複数の波長を多重・分離することにより複数の光信号や上り・下りの光信号を同時に送受信可能とする技術。
TDM_TDMA_WDM.png

・PONの方式
方式名B-PONG-PONGE-PON
標準化G.983シリーズG.984シリーズIEEE 802.3ah
伝送速度上り155Mbit/s、622Mbit/s155Mbit/s、622Mbit/s、
1.24Gbit/s、2.48Gbit/s
1.25Gbit/s
下り155Mbit/s、622Mbit/s、
1.24Gbit/s
1.24Gbit/s、2.48Gbit/s1.25Gbit/s
分岐数最大32最大64最小16
伝送フレームATMフレームGEMフレーム、GTCフレームEthernetフレーム





26_1_setubi_1_(2)i.png

(2)
(ⅰ)
答え:⑤ (A)両極NRZ符号 (B)CMI符号 (C)AMI符号

解説
説明
RZ
(Return to Zero)
RZ.png1をE、[V]、0を0[V]で表す。
ビットとビットの間に必ず、0[V]の電位が入るため、タイミング同期が取りやすい特徴がある。
NRZ
(Non Return to Zero)
NRZ.png1をE[V]、0を0[V]で表す。RZと違い、ビットとビットの間に0[V]は入らない。そのため、パルス幅が広くなり高周波成分が少なくなる
両極NRZryo_NRZ.pngNRZを±E[V]として両極の電圧まで広げたもの。1をE[V]、0を-E[V]で表す。
AMI
(Alternate Mark Inversion code)
AMI.png0は、0[V]に固定し、1は、+E[V]と-E[V]を交互に繰り返す。
CMI
(Code Mark Inversion code)
CMI.png1ビットの信号を2ビットに拡張して送信する。0は、"01"、 1は、"11"、"00"を交互に繰り返す。





26_1_setubi_1_(2)ii.png

(ⅱ)
答え:②
解説
①③④正しい

② メタリック平衡対ケーブルでは、一般に、低周波成分(正:高周波成分)ほどケーブルでの減衰量が大きいため、符号列の電力スペクトルに直流を含む低周波成分(正:高周波成分)の少ない符号化方式が用いられる。

補足
①について
・多値符号について
パルスの電圧を細分化した多値符号を使用すると、情報伝送量は増加するが、耐雑音性(ノイズなどによる誤差許容)が低下してしまう。以下の例では、2値符号と4値符号の比較をしている。1パルスで1bitの情報を送ることができる2値符号と比較して、同じ1パルスで2bitの情報を送ることのできる4値符号は、同じ時間で2倍の情報量を送ることができる。しかし、パルスの電圧を細分化しているため、隣接する値との識別が難しくなり、雑音などで波形が乱れた場合、伝送エラーなどが発生しやすくなってしまう。
tachika_rei.png

②について
高周波成分と伝送品質について
電気信号では、表皮効果近接効果により、周波数が高くなるほど信号が減衰してしまう。そのため、高周波成分が少ない伝送符号が望まれる。
・表皮効果
 導線に交流電流を流す際、周波数が高くなるほど、電流が導線の表面に偏って流れる現象。高周波になると中心には付近は、ほとんど流れなくなり、電流が流れる面積が小さくなるため、見かけ上、抵抗値が高くなる。この効果により高周波数帯でのメタルケーブルによる伝送は大きく制限を受ける。30kHz以上になると、抵抗値が\( \sqrt{f} \)に比例して大きくなる。
hyouhikouka.png

・近接効果:撚り線などで隣接する複数の導体間において、相互に発生させる磁場により導体内の電流密度にムラができてしまい、抵抗値が高くなる現象。表皮効果と同じく、高周波数帯で影響が顕著となる。

・周波数と抵抗値の関係
下図は、周波数の増加に対して導体の抵抗値がどのように変化していくかを表わしたグラフ。(縦軸は抵抗値の倍率/横軸は周波数(対数グラフ))。
実線は、単線の導体、点線は、同心撚り線の値を表している。単線は、表皮効果の影響、同心撚り線は、表皮効果に加えて近接効果の影響で周波数に応じて抵抗値が増えているのが見て取れる。
hyouhi_graph.png

③について
伝送路のタイミング情報について
タイミング情報の抽出方法には、外部タイミング方式と自己タイミング方式がある。
 ・外部タイミング方式:タイミング情報をデータ信号とは別の線から受け取る方式。
 ・自己タイミング方式:タイミング情報をデータ信号に埋め込む方式。信号レベルの立ち上がりと立ち下がり(0と1の切り替わり)を検出している。
伝送路では、自己タイミング方式によってタイミング情報を伝送している。自己タイミング方式は、同じ電位が連続して続くとタイミング情報が失われてしまう。そのため、伝送路符号では、電位が頻繁に切り替わりタイミング情報が失われない符号化が望まれる。

④について
伝送路上の再生中継器には、リタイミングと呼ばれる機能があり、伝送路上で劣化したタイミング信号を修正することができる。これによりタイミング信号内に蓄積されたジッタもリセットすることができる。

・【参考】問題内の用語について
再生中継器:受信した光パルスの有無(1,0)を判別し、新しい光パルスを再現させて送信する中継器。この中継器を通すことで、累積したひずみや雑音をリセットできる。再生中継器は、3R機能とよばれる3つの機能を持っている。
中継器の3R機能
3R.png

・等化増幅(Reshaping):減衰し歪んだ波形を、パルスの有無(1,0の判別)が識別できる程度まで増幅する機能
・リタイミング(Retiming):等化増幅された信号パルスからタイミングパルスを抽出する
・識別再生(Regenerating):等化増幅された信号から1,0の情報を判別し、リタイミングされたタイミングパルスに乗せて、識別した信号を送出する

ジッタ(Jitter): 時間軸上の理想的な位置に対する、タイミング信号の短期的位相変動 (ここで、短期的とは、変動が10Hz以上の周波数である場合を意味する)。
ワンダ(Wander): 時間軸上の理想的な位置に対する、デジタル信号の長期的位相変動 (ここで、長期的とは、変動が10Hz未満の周波数である場合を意味する)。

・ゆらぎの発生イメージ(ジッタとワンダ)
Jitter_Wander.png

平衡対ケーブル(ツイストペアケーブル):誘導による漏話を軽減する目的で絶縁被覆した2本の銅線をより合わせたケーブル。電話局から加入者宅まで加入者線やLANに使われる。減衰量は、周波数に比例するため、高周波数の信号の伝送には向かない。
同軸ケーブル:銅線を絶縁体で囲み、その上をシールドで覆ったケーブル。減衰量は、周波数をfとしたとき\(\sqrt { f } \)に比例する。



26_1_setubi_1_(3)i.png

(3)
(ⅰ)
答え:⑤
解説
①PCM符号化方式は、ビットレートが64kbit/ sであり、符号化則としては、日本などで採用されているA-law(正:μ-law)及び欧州などで採用されているμ-law(正:A-law)がある。

②PCM符号化方式は、従来のアナログ加入者線インタフェースを有する固定電話機やISDN標準端末には採用されていないが(※)、IP電話機には利用されている。(※従来のアナログ加入者線インタフェースを有する固定電話機では用いられないが、ISDN標準端末では用いられている。)

③ADPCMといわれる適応差分パルス符号変調方式は、ビットレートが128kbit/ s(正:32[kbit/ s])ハイブリッド符号化方式(正:波形符号化方式)であり、デジタルコードレス電話機、PHS端末などに採用されている。

④CS-ACELPを用いた音声符号化方式は、ビットレートが32kbit/s(正:8[kbit/ s])であり、IP電話機、インターネット電話などに採用されている。

⑤正しい

補足

・ITU-Tで標準化された音声信号の符号化方式
ITU-T勧告符号化方式ビットレート
(kbit/s))
説明サービス分類
G.711PCM符号化方式64PCM符号化を使って、サンプリング周波数8kHz、非線形量子化8bitで音声アナログ信号をデジタル信号に変換する。符号化則として、μ-lawとA-lawの2つがある。ISDN標準端末、IP電話機波形符号化方式
G.726ADPCM32適応予測と適応量子化を用いることで、PCM符号化方式と同等の音声品質を保ちながら、32kbit/s(PCM方式の1/2)で伝送する方式PHS、デジタルコードレス電話機波形符号化方式
G.729CS-ACELP8音声波形ではなく、コードブックに登録された波形パターンの番号と音声の特徴情報を送ることで情報量を飛躍的に減らした方式IP電話機、インターネット電話機ハイブリッド符号化方式


PCM符号とPCM符号化方式について
PCM符号化は、音声アナログ信号から「標本化⇒量子化⇒符号化」という手順でデジタル信号に変換するための符号化技術の事を表しており、CD-ROMやその他の技術にも応用されている(サンプリング周波数や量子化方法は、用途に応じて使い分けられる)。PCM符号化方式は、ISDNサービスの展開に伴い、デジタル音声通話のために開発されたITU-Tの規格のことで、サンプリング周波数や、非線形量子化の方式などが細かく規定されている。両者は、混同しやすいので注意が必要。

音声符号化の分類
波形符号化:波形そのものを符号化する方式。比較的音質は良いが圧縮率は低い。
分析合成符号化:人間の声帯などの発声のメカニズムに基づいて符号化する方式。波形の再現性を考慮していないため、圧縮率は高い。
ハイブリッド符号化:波形符号化と分析合成符号化を合わせた方式。分析合成符号化に波形情報を補助的に加えているため、圧縮率は、中程度。

①について
PCM符号化方式(G.711)の符号化則(符号化アルゴリズム)
PCM符号化方式(G.711)には、μ-lawとA-lawの2つの符号化アルゴリズムが選択できるようになっている。
μ-law:日本などで採用されている方式。14bitの線形量子化を8bitの非線形量子化に変換する。
A-law:欧米などで採用されている方式。13bitの線形量子化を8bitの非線形量子化に変換する。

②について
ISDN標準端末とISDN非標準端末について
ISDN標準端末は、ISDNで使用できるデジタル電話機などの事。ISDN非標準端末は、デジタル信号処理を持たないアナログ電話機のことで、本問題の「従来のアナログ加入者線インタフェースを有する固定電話機」は、これに該当する。アナログ電話機をISDN回線につなげるためには、TA(ターミナルアダプタ)を中継してアナログ信号からデジタル信号に変換する必要がある。
ISDN_houjun2.png

③について
ADPCM(adaptive differential pulse code modulation:適応差分PCM):適応予測と適応量子化を使用した差分PCM方式。PCM方式と同等の音声品質を保ちながら、32kbit/s(PCM符号化方式の1/2)で伝送することができる。PHSなどで使用される。

<ADPCMで使用される技術>
ADPCMでは、適用予測と適応量子化を使って、情報量を削減している。
・差分PCMと、それを応用した適用予測
音声は、連続性のある波形のため、隣接する1つ前の値から大きく変化することは少ない。そのため、波形の振幅値ではなく一つ前の値からの差分値を用いた方が、1サンプル当たりの情報を少なくできる(例えば、最大の差分量が128値で表せれば、8bit(256値)⇒7bit(128値)を使うことができる)。このように差分信号を量子化する方式を差分PCM(DPCM)という。更に、音声情報は、過去の信号と密接に関係しているため、将来の信号の予測を立てやすい。その特性を利用し、将来の音声信号の予測を立て、実際の信号とその予測値との差分値を伝送信号として使うことで更に情報量を減らすことができる。この技術を適用予測といい、ADPCMで使われている。
ADPCM_tekiou_yosoku2.png

・適応量子化
差分PCMにおける差分値を更に圧縮するため、振幅の変化が急激な部分は量子化ステップを大きくし、変化が緩やかな部分は量子化ステップを小さくすることで圧縮効率を更に上げることができる。
tekiou_ryousika2.png

④⑤について
CS-ACELP(Conjugate Structure - Algebraic Code Excited Linear Prediction)の仕組み
音声信号を10msずつ区切って、コードブックの波形パターンから類似しているものを選択し、その波形パターン番号、音声のピッチ、大きさ、その他の音声情報を合わせて80bitの符号情報として1秒に100回の速度で送信する(80bit×100回=8kbit/s)。受信側では、コードブックを使用して、波形パターン番号とその他の情報から音声を再現することができる。実際の波形ではなく波形パターン番号を送ることにより飛躍的に伝送する情報量を減らすことができる。
CELP_sikumi.png

【参考】
PCM(Pulse Code Modulation)符号化:アナログ信号を「標本化⇒量子化⇒符号化」という手順でデジタル化する方法
・標本化(サンプリング):一定の間隔(サンプリング周期)でその時の値(標本値)を採取する
・量子化:アナログ値である標本値は無限個存在するが、それを有限個の値に区切る。量子化の過程で、ある範囲内にある標本値は、同一値になる。量子化によって情報が失われてしまう事を量子化雑音という。
・符号化:量子化によって区切られた値を、1と0のパルス値に変換する。
degrade3.png



26_1_setubi_1_(3)ii.png

(ⅱ)
答え:②
解説
② SIPサーバは、機能別に、リダイレクト、プロキシ、レジストラなどで構成される。クライアントからのリクエストに応じてサービスを提供するサーバへSIPメッセージを中継する機能は、一般に、リダイレクトサーバ(正:プロキシサーバ)といわれる。

補足
・SIPのリクエスト/レスポンスモデルについて
SIPではIP電話機やVoIPゲートウェイ(アナログ電話機をIP電話機として使うために変換する機器)、VoIPアプリケーションがインストールされたPCなどのSIPプロトコルに対応したハードウェア/ソフトウェアのことをUA(User Agent)という。また、UAのうち、通話開始や電話切断などのリクエストメッセージを出す側のUAをUAC(User Agent Client)といい、UACが出したリクエストメッセージに応答するUAをUAS(User Agent Server)という。SIPは、UACがリクエストメッセージをUASに送り、UASがそれに応答するレスポンスメッセージをUACに送ることを繰り返す、リクエスト/レスポンスモデルに基づいている。また、このUASとUACの関係は、1つのトランザクションが終わると解消される。例えば、端末Aが端末Bに電話を掛けて通話を開始した場合、端末AがUAC、端末BがUASになるが、通話終了時に端末Bが電話を切った場合、端末BがUAC、端末AがUASになる。
SIP_UAC_UAS2.png

SIPのシステム構成
一般的に、レジストラ、プロキシサーバ、リダイレクトサーバは、1台のSIPサーバに包含されており、リクエストや状況に応じて各サーバとして動作する。ロケーションサーバは、位置情報等を保持するデータベースとしての機能を有している。
SIP_structure.png

各サーバとしての機能
-レジストラ
レジストラは、UAからの新規登録や更新、削除などを受け付け、ロケーションサーバの内容を変更する。
SIP_registra.png

-プロキシサーバ
プロキシサーバは、通常のセッション開始時に動作する。UACからのリクエストに対してロケーションサーバに問い合わせを行いUASの場所を特定した後、UASの呼び出しを行いセッションを確立する
SIP_proxy.png

-リダイレクトサーバ
リダイレクトサーバは、UASが移動していた場合に動作する。UASの移動先の情報をUACに返答し、UACから直接UASにセッションを繋げるように促す。
SIP_redirect.png

UA(User Agent)について
UAC(User Agent Client):通話などのリクエストを開始したユーザ端末
UAS(User Agent Server):リクエストを受けた側のユーザ端末

・大規模ネットワーク向けのシグナリングプロトコル(呼制御プロトコル)
MGCP:VoIPと公衆電話交換網(PSTN)の相互接続を目的として作られたプロトコル。CA(Call Agent)が呼制御の権限を持ち、配下の各種GW(Gate Way)を制御している。
Megaco:MGCPとH.323を統合し、より大規模なシステムを構築できるようにしたプロトコル。MGC(Media Gateway Controller)が呼制御の機能を持ち、MG(Media Gateway)はその指示に従って音声などを対象としたメディア処理を行う機能を有する。
・MGCPとMegacoのシステム構成
MGCPもMegacoも基本的には、同じ構成を取っており、指令元のマスター(CAやMGC)とそれに従うスレーブ(GW、MG)で構成される。
MGCP_Megaco.png





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